5、御代参街道
(ごだいさんかいどう)
江戸時代 京都の皇族が 正月・五月・九月に伊勢神宮と多賀大社へ名代(御代参)を送る
慣わしがあり 京都から伊勢へ参拝したあと 土山宿から多賀大社へお参りする際に利用さ
れ 寛永十七年(1640)五月に春日局が上洛の途中に伊勢から多賀へ参詣するにあたり
街道としての整備がされた中仙道愛知川宿手前の小幡までの街道(伊勢道とも言う)
日野・五個荘・保内・小幡・鎌掛などの近江商人が頻繁に通行した商人の道でもある
多賀大社は「お伊勢参らばお多賀へおいやれ お伊勢お多賀の子でござる」とか「伊勢にゃ
七度 熊野へ三度 お多賀さんへは月参り」と謡われている
小幡(中仙道と分岐)−奥(五個荘)−上中ー建部ー八日市ー中野ー今崎ー今掘(八日市)−布引山丘陵ー
桜川東ー大塚ー岡本ー鋳物師(蒲生)−石原ー小谷ー内池ー上野田ー木津ー寺尻ー鎌掛(日野)−笹尾峠ー
野上野ー和草野ー土山(東海道に合流)
感想
御代参街道 特に 八日市市および今崎から蛇溝に至る道筋には家並みが続き お地蔵さん
や小さな津嶋神社・秋葉山・愛宕山などの祠や常夜燈が他の街道とは違って多く見られる
それが何を意味しているかは調査していないが おそらくは火事が多かったのだろう
五個荘新堂常夜燈
銘 伊勢大神宮 永代常夜燈 基壇 所在地 東近江市五個荘木流 (苗村神社境内) 建立 寛保三年(1743) 願主 御代参街道沿いにある |
1、竹鼻町常夜燈
銘 常夜燈 所在地 東近江市建部日吉町 建立 不詳 願主 昔ながらの街並みを残す御代参街道 筋にあり 等間隔くらいの距離に常夜 燈と津嶋神社の祠が続いている |
2、建部北町常夜燈
銘 常夜燈 所在地 東近江市建部日吉北町 建立 平成七年八月 願主 小林佐市 乳橋地蔵尊のある地点から 愛知川に向かう新しい県道の 傍に立つ人宿地蔵尊にある |
3、浜野町常夜燈
銘 常夜燈 町内安全 所在地 東近江市浜野町 建立 大正十四年(1925) 願主 |
4、松尾町常夜燈
銘 大神宮 末庚祖 所在地 東近江市松尾町 建立 明治17年(1884) 願主 |
5、清水常夜燈兼道標
銘 道標兼常夜燈 左 飛乃 み奈口 右京 むさ 八まん道 右 多賀 ゑち川 ひこね道 所在地 東近江市清水町 建立 文政9年(1826) 願主 山田弘誓 図司 某 八風街道と御代参街道とが交わる場所 にあり 道標の上に桧皮を被った火袋が 取り付けられている |
6、金屋常夜燈A
銘 愛宕山常夜燈 月参講中 村中安全 所在地 東近江市金屋 野々宮境内 建立 寛政六年(1794) 願主 金屋の地は中世以来鋳物師が 多く居住して 鋳物師の総元締め を努めていたと言われる また 中野地区がタバコの産地 として潤い 金屋地区ではキセル (矢立)の産地としても有名で あった |
7、金屋常夜燈B
銘 常夜燈 町内安全 所在地 東近江市金屋二丁目 建立 天保7年(1836) 願主 野々宮神社(道路を挟んだ)前 の延命地蔵尊内の津嶋神社脇に 立っている |
8、笠屋地蔵常夜燈兼道標
銘 道標兼常夜燈 右 いせ道 左 たか道 所在地 東近江市栄町 建立 不詳 願主 笠屋地蔵尊の角に立つ |
9、中野神社常夜燈
銘 常夜燈(対) 所在地 東近江市中野 建立 天明2年(1782) 願主 納屋和兵衛 |
10、中野神社脇常夜燈
銘 津嶋神社常夜燈 所在地 東近江市中野 建立 願主 |
11、今崎町常夜燈
銘 常夜燈 所在地 東近江市今崎町 郵便局前 建立 昭和七年(1932) 願主 津嶋神社の祠脇に立つ |
12、今崎日吉神社常夜燈A
銘 愛宕山 所在地 東近江市今崎町 建立 不詳 願主 今崎日吉神社鳥居脇にある 愛宕山の祠の脇に立つ |
13、今崎日吉神社常夜燈B
銘 常夜燈(対) 村中安全 氏子中 所在地 東近江市今崎町 建立 文化10年(1813) 願主 神社が所有する鎌倉中期以降の 中世村落史や中世商業史とうの 貴重な文書を伝えることが大正 時代に判明 比叡山延暦寺とも関係深い 御代参街道沿いに立つ |
14、蛇砂川常夜燈
銘 伊勢両宮 従是いせ山田廿五里 往来安全 所在地 東近江市今崎 建立 安政5年(1858) 願主 向井善五郎(薬商人) |
15、今堀町常夜燈
銘 常夜燈 所在地 東近江市今堀 建立 願主 津嶋神社祠の傍 |
16、市辺三所神社常夜燈
銘 太神宮 所在地 東近江市市辺 建立 不詳 願主 市辺三所神社境内にあり小さいので 見過ごしやすい |
17、蛇溝常夜燈兼道標
銘 道標兼常夜燈 右 た加 八日市 左 むさ 八まん道 蛇溝邑安全 往来安全 所在地 東近江市蛇溝今堀 建立 弘化2年(1845) 願主 御錫司 弥左衛門 見送り稲荷の向かいに立つ |
18、川合本郷常夜燈兼道標
銘 常夜燈 すくいせひの道 右 た加 八日市 すく むさ八まん道 村中安全 所在地 東近江市川合町本郷 バス停前 建立 嘉永元年(1848) 願主 津嶋神社祠傍 |
19、川合東出常夜燈
銘 常夜燈 金毘羅 講中 村中安全 所在地 東近江市川合東出 建立 寛政12年(1800) 願主 川合東出の集落から岡本 鋳物師 日野へ至る街道筋 |
20、川合常夜燈
銘 常夜燈 (自然石) 所在地 東近江市川合 建立 願主 川合東出常夜燈前 |
21、中羽田常夜燈
銘 常夜燈 所在地 東近江市中羽田 建立 願主 |
22、川守常夜燈
銘 大神宮 常夜燈 所在地 竜王町川守 建立 願主 どの街道からも外れているが 近江八幡市から日野へ向かう 県道14号川守交差点にある |
23、上野田常夜燈兼道標
銘 伊勢両宮 常夜燈 右 いせ道 所在地 日野市上野田 建立 文化9年(1812) 願主 當村中 日野火振り祭りが行われる街道で 伊勢に向かう場所にある 火袋の笠が立派である |
24、三十坪常夜燈
銘 常夜燈 所在地 日野町三十坪 建立 寛政六年(1794) 願主 県道477号の三十坪交差点近くに あり |
25、瓜生津常夜燈
銘 常夜燈 所在地 東近江市御園 建立 天保六年(1835) 願主 国道367瓜生津交差点付近にある 天満宮の常夜燈 付近には明かりはなく 旅人の安全 を願ったものか |
26神田常夜燈
銘 太神宮 常夜燈 所在地 東近江市神田 建立 願主 愛知川に架かる御河辺橋の 右岸に立つ 風化はげしく細かな銘読めず |
27日野:音羽常夜燈
銘 太神宮常夜燈 所在地 日野町上音羽 建立 慶応四年(1868) 願主 サツキ寺として有名な雲迎寺の近く で道を右にとれば鎌掛をへ通じる |
28日野:中在寺常夜燈
銘 大神宮常夜燈 所在地 日野町中在寺 (中在寺JA前) 建立 大正四年(1915) 願主 神明講 蒲生から日野町へ抜ける旧道沿い 現在のR307号中在寺信号を集落に 入る 結構大きく 立派な常夜燈である |
番 外
東市辺町常夜燈
東市辺町の村には天王講、明神講、行者講などがあり現在も行事が引き継がれている
また 村の出入り口となる四隅には津嶋神社の祠があり その脇に常夜燈が建立
されている
現在も天王講(津嶋神社講)の人々により 毎日行灯を回して常夜燈に灯りを灯して
村内安全を祈っている
江戸時代にはこの地域(中村村)はかんがいの便が悪く タバコの栽培が盛んで そのほか
酒造・質屋・荒物・煙草・大工・傘師などの商人・職人が41人もいたとの記録があり 村として
は栄えていたようである
そのこともあってか 常夜燈の脇には番人小屋(東出・北組に物置として現存)があって
不審者の村への出入りを監視していたとのことです
宮街道常夜燈 |
辻出常夜灯 |
東出常夜燈 |
北組常夜燈 |
八日市市内の祠と常夜燈
東市辺町の村中と同じように 八日市市内を通る御代参街道筋にも多くのものが見られる
他の地域にはあまり見られない光景である
乳橋地蔵尊A (建部日吉町) |
乳橋地蔵尊B (建部日吉町) |
金屋津嶋神社A (東近江市金屋町) |
金屋津嶋神社B (東近江市金屋町) |
金屋津嶋神社C (東近江市金屋町) |
金屋津嶋神社D (東近江市金屋町) |
中野高札場津嶋神社 (東近江市中野町) |
道 標
五個荘木流町道標
銘 右 ゑち川 た加 道 左 む さ 八まん道 所在地 五個荘木流町道標 (苗村神社近く) 木流町は中仙道の小幡から八日市へ 向かうすぐ近くの集落 |
小幡町道標
銘 右 京みち 左 いせ ひの 八日市みち 所在地 五個荘 小幡 建立 享保三年(1718) 中山道と御代参街道の分岐点 近江商人の前身と言われる小幡 商人の町でもあった 主に伊勢方面での活躍であった と言われる 立派の彫りのある道標である |
清水町道標
銘 左 いせ 飛乃 み奈口 右 京 むさ 八まん道 右 多賀 ゑち川 ひこね道 所在地 八日市市清水一丁目 建立 文政九年(1826) 願主 山田図司(弘誓) 清水町は八日市市の中心部で 御代参街道と八風街道の交差点 で行先が沢山示されている (交通の要所) |
栄町道標
銘 右 いせ道 左 たか道 所在地 八日市市栄町 清水町道標を過ぎた次の交差点 の地蔵堂の角にある |
今堀町道標
銘 右 玉緒市原道 左 八日市飛行場 太郎坊多賀 道 所在地 八日市市今堀 街道筋にひっそりと立つ 八日市市には飛行場が大正十年 (1921)に沖野ヶ原にできた この地は風向きがよく江戸時代の 昔から大凧あげが現在も続けられて いる |
蛇溝道標
銘 右 たか社 八日市 左 西京 八まん道 所在地 八日市市蛇溝 (ホープタウン交差点) 道標の上部に蓮華座をつけた 地蔵菩薩坐像が彫ってある |
川合東出道標
銘 右 いせ ひの道 左 むさ 八まん道 所在地 東近江市川合東出 常夜燈の傍にあり |
岡本町道標
銘 右 たかみち 左 八まんみち 所在地 東近江市蒲生岡本 |
日野町上野田(こうずけだ)道標
銘 右 いセみち 馬見岡神社 二十丁 左 ひの山王宮 せ道へ通ぬけ 所在地 日野町上野田(こうずけだ) 建立 文化四年(1807) 中井源左衛門 御代参街道からこの道標を細い 道を行けば伊勢への道となる 県下の常夜燈や道標に建立 (寄進者)に中井姓が結構見られる が 日野出身で京都にいた 中井正治左衛門の関係者か |
内池郵便局前
銘 右 たが北国道 左 いせみち 所在地 日野町郵便局前 建立 上野田から近江鉄道日野駅へ向か う途中の内池集落の郵便局前に立つ 日野駅近くに「たが」と標された小さな 道標があったようだが 車で破損さ れたのかそれらしき形のものが見ら れるが現物はない |
寺尻茶屋町
銘 右 長徳寺百くかん音一丁 ひのかちみち (かちみち=近道?) 左 たが北国道 所在地 日野町寺尻茶屋町 建立 文化四年(1807) 中井源左衛門 鎌掛宿から下って日野川を渡り 寺尻にはいる 昔この付近は茶屋町と呼ばれ お茶屋とか料亭が並んで大層栄えて いたそうであるが現在はその面影は 全くなくお堂に至る日野川土手は竹藪 となっている |
雲雀野(松尾交差点近く)
銘 右 いせ道 (自然石) 所在地 日野町松尾雲雀野 鳥居横 建立 |
鎌掛町地蔵堂前
銘 右 いせ道 所在地 日野町鎌掛地蔵堂前 建立 |
鎌掛旧宿西端
銘 右 みぎ北国 所在地 日野町鎌掛旧宿西端 地蔵堂脇の細い道を下り 寺尻へ向かう三叉路の角 に立つ 建立 |
鎌掛町道標
銘 右 御代参街道 左 石楠木谷 所在地 日野町鎌掛町道標 |
日野町清田道標
銘 右 はざま しん城 てら庄 道 北 いし原 八日市 はちまん 道 左 こま月 大の つち山 道 所在地 日野町清田 建立 嘉永七年(1854) 藤澤文久朗 妻 志門 のどかな田園が残る道標で 行き先が九ヵ所も表示されており 一番珍しいのは寄進者に妻の名が 残されていること(他では見ない) |
湖東町横溝道標
銘 かたすぐ 右 たかの (永源寺のこと) 左 おはた 所在地 湖東町横溝 (湖東町診療センター) 地蔵菩薩を中心に左右に行き先が 彫ってある この形式の道標は湖東地区と愛東町・ 多羅尾の浄顕寺境内に見られる |
湖東町池庄道標
銘 左 八日市道 弘法大師旧跡 所在地 湖東町池庄 (豊国神社前) 神社前に立っているが見落としやすい |
上岸本道標
銘 右 たかの 左 百さい寺 所在地 湖東町上岸本 県道229号と旧道の交差点にあり |
中岸本A道標
銘 右 たかの 左 ゑち川 所在地 湖東町中岸本交差点 地蔵菩薩を中心に左右に行き先が 彫ってある 同じ場所にもう一体ある(下) |
中岸本B道標
銘 右 池庄 左 ゑち川 所在地 湖東町中岸本交差点 地蔵菩薩を中心に左右に 行き先が彫ってある 写真のため前掛けをはずして いるが きれいな前掛けがさ れている |
鯰江城道標
銘 右 たかの 左 鯰江村 手前の地蔵光背型の道標 所在地 愛東町鯰江 鯰江城は土塁を残すのみでこの 史跡がなければ判らない 場所は愛知川の右岸 鎌倉時代には奈良興福寺の荘園 があったそうである |
中羽田道標
銘 右 桜川 ひの 左 市辺道 所在地 東近江市中羽田町 道標の頂頭に前掛けと頭巾を被った 地蔵菩薩坐像を頂く珍しい形である また方角を彫刻された手の指で示して いるのもまためずらしい 農道の角に立つ |